改めて目を向けてみた神保町という街 駅から自宅までの道に田園地帯が多く、春先に川沿いを歩いているとノビルを摘んで酢味噌をつけて食べることも。休日は自宅で家事をすることが好きという児島さんは、以前まで神保町も職場と駅の往復で、実体験としてどこかに行って何かをすることはなかったそうです。・・なんたってカレーを食べるのも、料理好きの児玉さんだけあって「自分で作る方が楽しいし美味しい!」と思ってもいたわけで。だけれど児玉さんが街歩きを始めて気づいたのは、「色んなものが重なっててはがせばはがすほど色んなものが出てくる街」ということ。カレー屋や古い喫茶店、中華料理屋に古くからの商店街や史跡が残っていたり。例えば「このお店には中国の元首相・周恩来が来ていた」なんて逸話も普通にあるんです。専修や明治など大学に留学する人たちがいて、彼らを支援する組織があって下宿があって中華料理を作る人達もいて。色んな国籍の料理もある。「インドにはカレーって料理はないって知ってた?」と児玉さん。カリーはスパイスの総称。それらを中心としてイギリスのカレーシチューがあって、それにご飯に沿える形態が出来たのはイギリスだと言われているらしい。カレー料理の仕方もインドの南と北で違うしタイではグリーンカレーだし、トムヤムクンと似ているカレーもあれば、ネパールはスープが無くなりそうなくらい煮込まれているけど、日本だとネパール料理でも日本風の味付けに変わっていたり。まさに百科事典・・いやそれ以上の情報量と、街歩きをした体感値が合わさったお話に、こちらも目から鱗が落ちっぱなし。「素材を見つけて歴史を紐解いて調べたり、料理は食べて楽しむこともできる。神保町には色んな楽しみ方がある。」そう教えてくれました。 これからの神保町 10年街歩きする中で、最近こういうことをもっと新しくしたいというのはありますか?「街がどんどん変わるから、新しい建物が出てくる。個人的にはどんどん新しい建物作ってほしいな。小学校の頃新しい建物ができると、ビルとビルの地下街がどう繋がっていて、どこが近道だとか新しい店が出来たとか、真っ先に探検していました。それを誰に伝えるわけではないんだけどね、ワクワクして。私にとっては探検そのものなんです。」失礼かもしれないけれど、なんだかあの好奇心がいっぱいの文学少年がまた児玉さんの中から顔を出したよう。聴いているこっちまでなんだかワクワクしてくる。 「ここ10年の移り変わりの中で、古い建物が崩落の危険性があるからと壊されることもある。商業的な建物が多く、武家屋敷のように保存がなされているわけでもない。その一方で、表通りに一本入ったビルの中で、趣味の本を集めて古本屋をやり始める人が現れたり。まさにEDITORYもそんな場所。やっぱり本を軸にして知り合いになることが多いんだけれど、色々な新しいお店や建物も含めて神保町。」たしかに初めて来る人達はガイダンスができるところが無いと来づらいしなじみにくい。だけれど『本と街の案内所』みたいに、彼らの窓口になってくれる場もできつつあるそう。「この間行ってみたら、本を売りたいという学生が来ていてね。神保町は買取窓口があるわけではないので、係りの人がジャンルを聞いて案内をしていたんだけど、教科書だった。ブックオフじゃ大したお金にならないからって持ってきたんだろうね(笑)」 なんだか私にとって神保町は、お話を伺うまでノスタルジーを湛えた新参者を拒む街のようなイメージがありました。だけれど、実は見えていなかっただけで昔ながらの歴史と新しさが交錯する温故知新の街なんだというイメージへと変わっていった気がします。 神保町だからこそ行きたくなる この街のあの本屋に行く。電子書籍もある今、その理由って一体なんだろう。それを今一度、このインタビューの最後に聴いてみました。 「何があるのか欲しいのかはわからないけれど本棚やコーナーを一通り眺めていく。するとピンとくる本に噛まれて、買って帰る。そんな偶然の出会いが現実の方が起こりやすい。360度全部が本っていうのが電子書籍とは圧倒的に違いますよね。」 あとはそんな本屋を取り巻く街の雰囲気なんだろうな。「本に噛まれる」前後に駅から本屋まで歩いてくる道のり、入ったお店や出会った人、そんな圧倒的な情報量や体感値がある。だからこそ、またこの街のあの本屋に行く。まさに神保町は、色んなものが重なったこの街にしっかりと根付くお店と、それを期待すると同時にワクワクしたくて訪れる人達で溢れているんだなと思いました。 【ライター紹介】ちさと10〜20代女子対象のイベント企画サークルで活動して約5年。2年前からは広報担当としてブログも日々更新している。就職活動を目前にして「女子大生が働くことを身近に感じられるきっかけを作りたい」との思いから、スターバックスのアルバイト・保険営業マン・野菜ソムリエにインタビューを行う。1年前からは求人サイトでの見習いをスタート。「働き方」「インタビュー」「女子」「おじさん」が大好きな、都内の大学に通う4年生。7月からEDITORY神保町にて、「女子大生から見た神保町の魅力と働き方」をテーマにインタビュー記事を担当。
児玉さんの幼少期児玉さんは、小さい頃から友達付き合いをワイワイするタイプでなかったようです。例えば、公園の砂場でもいかに高い山を作るかを目指して1人で夢中になっていたり。小学生の頃も、1人石の階段で日向ぼっこしながら考えごとをするのが好きで、先生にも心配されて親に相談されたり。 出典: (http://www.mandarake.co.jp/information/2008/02/23/12nkn06/)より そんな児玉少年は、本を読むのが大好きだったそう。小公女セーラや秘密の花園のような児童文学、両親が毎月買ってくれる『世界少年少女文学全集』という約600ページあるような厚い本も読みふけり、さらには文学部だった叔父さんの影響で、大日本雄弁講談社(現在の講談社)が手掛ける全集がズラーッと家にあり、古臭く旧仮名遣いのその本のルビを辿って読んでいました。そんな文学少年の一番のお気に入りは意外にも百科事典。調べるためにではなく、読み物として愛読していたそうです。内に秘めた情熱を特に誰かに語るわけでもないけれど、そんな本が与えてくれるまだ見ぬ世界を想像することに夢中になっていたのだとか。 三省堂書店との出会い 実は児玉さん、もともとはライセンスを取得しパイロットになることを目指していたのだとか。まさに子供の頃憧れる職業でもあるけれど、それを実際に目指していた方とお会いしたのは初めて!しかし、児玉さんはパイロットになることを諦めます。学校に通いながら工学を学び、そこで地元名古屋でアルバイトを始めるのです。それが、時給も高かったことが決め手と言う(笑)三省堂書店との出会い。それから入社をしたのかと思いきや、専門の工学を活かして自動車会社の営業をやっていたのだとか。 やがて今の奥さんと結婚し子供も生まれました。そこでなんと児玉さんは営業を辞め、バイオリン講師の奥さんと二人三脚で働きながら再び三省堂書店でアルバイトを始めます。1年間務めた後、社員登用試験を受けて社員となったのでした。児玉さんが社員になってまず手掛けたのは「OASYS Lite」という家庭用ワープロを各店で販売すること。1984年当時、機能削減を図っても22万円したそうだが随分売れたそう。実はこれまでにもビデオやレーザーディスクのレンタルも開始するなど、話題性のあることにも果敢に挑戦している三省堂書店。そこには、書店は本を売るだけではなく総合情報産業だと考える前社長の考えもあったのでした。 図書館のデータベースをITで管理するといった取り組みもありその営業活動では大手町や人里離れた研究所などを周り、神保町という町を意識するようになったのはここ10年くらいだそうです。神保町の坂や史跡をSNSで紹介したり、神保町に根付いている三省堂書店としての取り組みをはじめたのだとか。そんな三省堂書店での取り組みから改めて目を向けてみた神保町という街。そこで感じた児玉さんなりの魅力を次回はご紹介していきます。 【ライター紹介】ちさと10〜20代女子対象のイベント企画サークルで活動して約5年。2年前からは広報担当としてブログも日々更新している。就職活動を目前にして「女子大生が働くことを身近に感じられるきっかけを作りたい」との思いから、スターバックスのアルバイト・保険営業マン・野菜ソムリエにインタビューを行う。1年前からは求人サイトでの見習いをスタート。「働き方」「インタビュー」「女子」「おじさん」が大好きな、都内の大学に通う4年生。7月からEDITORY神保町にて、「女子大生から見た神保町の魅力と働き方」をテーマにインタビュー記事を担当。